解散(大学卒業)のカウントダウンは始まった。1ヶ月で13曲というマラソンレコーディング、 その果てにたどり着いた解答、「エーテル」
2003年の冬、終わりはもう目の前にきていた。大学生活の終わり。それぞれの新しい始まり。生まれ育った場所も環境も違う二人がともに音楽を作り、そしてまた別々の道を歩もうとしていた。
「まだ、もう一枚作れる」
村田君が言った。僕も同じ気持ちだった。
悔いは残さない。それだけがルールだった。アルバムの音楽的コンセプト、そんなものはもはやない。『フレイズ』『放射する欠片』2枚のアルバムに収まりきらなかったすべてのライブレパートリー、実に12曲。そして総括というべき新曲1曲。それが3rdアルバムの全容だ。
過去2枚の作品制作に費やされた時間、それぞれ約半年ずつ。今回は全13曲という最多曲数を約1ヶ月で録音しなければならなかった。
その1ヶ月。就職や新生活に向けた準備、様々な慌ただしさがつきまとうなか、「STUDIO K106」と名付けられた僕の部屋に村田君も毎日のようにきてレコーディングした。ときには泊まり込みになった。
そこには終わってしまうものへの悲しみがあった。寂しさがあった。そしてだからこそ悔いは残さないという確固たる意志と集中力があった。
そしてギリギリになってこのアルバムは完成した。唯一の新曲は「エーテル」と名付けられた。アルバムタイトルもそれに倣った。
僕たちエーテルスケッチにとって「エーテル」とはなんだったんだろう?それは幻のようなものだった。それは伝えたいと願い、伝えようと動く力だった。レコーディング後ただ一度解散ライブと銘打って「エーテル」が演奏されたとき、確かにそれはそこにあった。
今、僕たちは再びエーテルスケッチを名乗り、ギターを手にしているけど、それは喜ばしいことだけど、あの日、あの場所に置いてきたものを、悲しみを、寂しさを、エーテルを、僕たちは忘れない。
このアルバムを聴くといつもそう思う。
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