HAND DOWN
2023年04月12日 Release
8th Album

『HAND DOWN』

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Track List

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  1. 新幹線が開通ったから
  2. 僕の未来の果ての君に
  3. 消費
  4. ある兵士の死
  5. 深夜11時のニュースキャスター
  6. 夕暮れに似た悲しみに
  7. スパンコール

All Music and Lyrics by 三田村 潤 Arranged by 三田村 潤

1 新幹線が開通ったから

新幹線が開通ったからふるさとが近くなったよ 観光客に紛れてはあの駅が見えるのを待つ SNSで近況はなんとなく知っていたけど 久しぶりの笑顔は写真とは違うね カビ臭い古い話でいつまでも笑える 同僚にゃできない話もお前らには言える 砂時計を逆さにして 少しだけ時間を巻き戻そう All night long はもう辛い けど もう少し まだ もう少し 話したりない このままじゃ お前らが聞いててくれるなら 「いいね」はつかなくてもいい そんなことじゃないから あの頃飲んでた店ではないけど 悪くはない気分 食事に気を付け運動取入れ 何とかやっている 取り巻く環境、それぞれの事情 それもわかっている でもうまくいかないことばかりだった あの頃を笑えてる 常識ぶった表情は新幹線に置いてきた 嫁さんにゃできない話も俺が聞いてやる 砂時計を逆さにして 少しだけ時間を巻き戻そう All night long は久しぶり だね もう一杯 まだもう一杯 帰りたくない 明日には 今の暮らしがまたやってくる 仕事のできる男だと 向こうでは言われてるのに こっちではいつまでもガキのまま 砂時計を逆さにして 少しだけ時間を巻き戻そう All night long はもう辛い けど もう少し まだ もう少し 話したりない このままじゃ お前らが聞いててくれるなら 「いいね」はつかなくてもいい そんなことじゃないから また一緒に飲もうぜ!
シンプルなオールドロックンロールの雰囲気をまとった同窓会ソング。サウンドに対して「SNS」やら「いいね」やらが歌詞に入ってくるのが現代的。

2 僕の未来の果ての君に

グラフで示された未来は 取り返しのつかない方に伸びていった 仮定形で語られる悲劇は もうそこにきてるとニュースで言ってた 幼い頃に思い描いてた 空想は無限に広がって Oh,Sunrise! 続く空見上げた 疑うこともなく 純粋に 今 僕にとっての未来は夢物語じゃなくて 歩いてきたこの道と地続きの延長線上 だからこそ選び取らなきゃ わずかに残る分かれ道 確かな選択をと未来の子らから 託されている 授業で読み上げた未来を クラスの誰かが意地悪く嗤った それ以来どこか現実を 分かったふりでさかしく生きてきた それはそれで悪くないんだよ 後悔なんてしちゃいないよ だけど君が選ぶ未来は どこまでも自由でいて 欲しいから 今 君にとっての未来が 果てしなく遠い未来が いくつもの枝分かれの先に待っている 道しるべになんてなれない 僕にできることと言えば 確かな選択をと後ろから光を 灯してくこと 今 僕にとっての未来は夢物語じゃなくて 歩いてきたこの道と地続きの延長線上 だからこそ選び取らなきゃ わずかに残る分かれ道 確かな選択をと未来の子らから 託されている 僕の 未来の 果ての 君に 僕の 未来の 果ての 君に
このアルバムのメインテーマともいうべき、大人の責任を問うメッセージソング。40歳を過ぎて(人生の折り返し地点などとよく言われますが)、歌詞の通り「今 僕にとっての未来は夢物語じゃなくて歩いてきたこの道と地続きの延長線上」と気づいて受け入れたことから話が広がっていきました。

3 消費

1ヶ月かけて描かれた漫画 10分で読まれてまた来月 消費していく 消費されてく また 新しい刺激求めてる 1年かけて作られた映画 2時間越え長編アドベンチャー 「あの演出じゃ台無しだ」とか 知ったかぶりのクチコミが流れる ほら また 消費 してく ほら また 消費 されてく ほら また 消費 してく ほら また 消費 されてく 3分ちょっとのポップソングで 不変の愛を歌ったとしても ランチタイムのカップラーメンの タイマー代わりになるだけ この歌はなにかのアンチテーゼ? そんなこと考えるわけねーぜ! オレはただ歌をうたうだけ 生み出す側でいたいだけ 味噌 しょう油 塩 豚骨 味噌 しょう油 塩 豚骨 味噌 しょう油 塩 豚骨 味噌 しょう油 塩 豚骨 それぞれの人に暮らしがあって それぞれにいつも消費している カップ麺が胃袋満たすように この歌があなたの血肉になれ
このアルバムで随一のユーモラスな曲。私たちの毎日は、高尚でもないし、ドラマチックでもないけれど、様々なものを消費し、あるいは飲み込みながら、したたかな強さを持っていきたいのです。

4 ある兵士の死

母さん 英雄にあこがれて 汽車に乗る私を たくさんの人に隠れるように 見送ってくれましたね 悲しげな表情(かお)で 小さな旗を振って Woh , Oh , Oh, Woh , Oh, Oh つらい船酔いに苦んで たどり着いた見知らぬ国 作戦の地へ向かうため 三十㌔の背嚢を背負って 一日二十㌔の 行軍が続きます それより 本当につらいのは 昼ではなく夜の方でした 上官や古参の兵士に 「精神注入だ」と殴られて 顔はひどく腫れて ズキズキ痛みます Woh , Oh , Oh, Woh , Oh, Oh 母さん 初めての戦闘は 引き金を引く指が震えました 敵軍の補給路を断つために 行軍は続きます ずっと歯を磨いていないので 虫歯が痛みます 水の浸みた軍靴(くつ)が 凍るようです Woh , Oh , Oh, Woh , Oh, Oh いつからか銃弾も食料も 補給が来なくなりました 現地自活の名のもとに 民衆からわずかな食料を 奪うことで今日も なんとか生きてます あばらの浮き出た兵隊たちの 行軍は続きます マラリアや赤痢でどれだけの 戦友を看取ったことでしょう ウジ虫が私の 腕を撫でます 戦って戦って生き延びて 帰ればなお 「貴様!何故に生きているのか」 とののしられ 「生きて虜囚の辱めを受けず」 退かぬ ならば散るだけ ある日 撤退の命令が とうとう下されました されども 私には来た道を 引き返す力がありません マラリアが身体を 蝕んでいたのです 上官はもう歩けない者達に 昇汞錠を2錠配りました 多くの動けない戦友が その毒で自ら命絶ちました 遠い異国の地で 私も死にます 戦って戦えなくなったものは 仲間に看取られることこそが栄誉 「生きて虜囚の辱めを受けず」 退かぬ ならば散るだけ 戦って戦ったその先に この戦争はいつか終わるでしょうか 祖国の平和は守られたでしょうか 十年後の人は皆平和ですか 戦って戦ったその先に この戦争はいつか終わるでしょうか 祖国の平和は守られたでしょうか 百年後の人は皆笑顔ですか Woh , Oh , Oh, Woh , Oh, Oh Woh , Oh , Oh, Woh , Oh, Oh Woh , Oh , Oh, Woh , Oh, Oh
実際の戦争の様々な体験談をひとりの兵士の視点で再構築したストーリーテリングソング。戦争について政治やイデオロギーの話は一切入れず、その時点でこの曲はいわゆる反戦歌ではないのです。ただ、当時の兵士が何を考え、感じていたかについて思いを馳せるものであったらと思います。

5 深夜11時のニュースキャスター

凄惨な事件をニュースキャスターは報じた また子供らが犠牲になった 僕は胸をえぐられるような気持ちで 祈りを捧げた 涙が流れた テレビでは引き続き国会のニュースで 与野党の論戦が繰り広げられている 感情のさざなみも明日には静まって そうでなくちゃ身が持たない それも分かっているけど 深夜11時のニュースキャスターは 今日という一日の出来事をまとめた 「明日は久しぶりの晴れ間になりそう」だと 天気を教えてくれた また明日
大曲の後はシンプルで短い曲。「国会」だとか「与野党」だとかが歌詞に入ってますが、政治の話がしたいわけじゃなくてこのアルバム全体を通して描きたいのは、過去ではない今日という日の「現実」なのです。

6 夕暮れに似た悲しみに

涙を流せればまだ良かった 我慢できるほどに歳を取った 作り置きのスープを火にかけて 温まった振りをしたなら もう 傷ついたなんて顔は隠して 明日には忘れてることにして 眠れる気配なんてなくたって 目を閉じるしかないのだろう 夕暮れに 似た 悲しみに カラスの声がミシン目のように連なる 宵闇に変わるその刹那 青い炎が まだ消えてないと気づく シャナナナ… シャナナナ… 世界で起きてる悲劇よりかは ちっぽけなことだってわかってる だけどなかったことにはできない まだ心はここにある 夕暮れに 似た 悲しみに カラスの声がミシン目のように連なる 宵闇に変わるその刹那 青い炎が まだ消えてないと気づく シャナナナ… シャナナナ… シャナナナ… シャナナナ… 誰かが私を見ないふりして 私も私を見ないふりした だけどなかったことにはできない まだ心はここにある
それでもそんな「現実」が続く毎日に、心が麻痺してしまうようなときがあります。「まだ心はここにある」という確かな宣言をストレートなロックサウンドに乗せました。

7 スパンコール

分厚い雲が空を覆って 今宵は夜よ 星も見せてはくれないのかい? 僕はひとり 部屋の隅で 窓の外に 何か探している 街は今日もにぎやかに違いない あぶれちまってるヤツもいるに違いない ひとりひとり うちに帰り 空を見上げて 何思う キラキラ光るものが欲しくて 僕は何も持ち合わせちゃいないけど 君のことを想いながら ベッドに身を投げる 静寂を壊すものを探してる この孤独を癒すものを探してる でもそれはきっと 街にはなくて 空を見上げて 僕はただ 午前二時に 降りだした雫 街灯の光に濡れる雨粒 君のことを想いながら ヘタクソな歌 くちずさむ この雫を 光る雨を 君に届けたい もどかしく思うけど 手のひらにすくえば 輝きを失う だから僕は 君に祈る 朝陽が昇り 水たまりができ トラックがそれを跳ね除けていくけど 今はもう枯れた花のように 雨は降らず ……雨は降らず キラキラ光るものが欲しくて 僕は何も持ち合わせちゃいないけど 君が目覚め 空を見るころ 僕は眠りにつこう
これだけ唯一最近作った曲ではなく学生時代に作ったもの。ストレスフルな楽曲が続いた中で、この曲は長い潜水の後の息継ぎのような、あるいは映画のエンドロールのような心を落ち着かせる曲になるかもしれません。

HAND DOWN セルフライナーノーツ

前作『Great Evening』のCDの帯には、収録曲「暖炉」の歌詞を引用して「だけどもっと夢を見ていいじゃないか」と書かれています。世知辛い現実にあって音楽が夢を見るひとときであってくれたらという思いでした。 あれからまたいくつかの歳月を経て、世界は更なる混沌に向かっているようです。COVID-19という疫病の世界規模のパンデミック、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻、世界各地で起こるこれまでにないほどの規模の天災。一夜にして平和な毎日が脅かされる現実を目の当たりにしています。 音楽には人を癒す力があると信じていますが、今現在求められているのは逃避的な癒しだけではないと感じています。このアルバムを作るにあたり、過酷で不条理な現実を一度しっかりと冷静に凝視することにしました。 過去というものはどうしても脚色されます。楽しかった思い出はより美しく、ときにつらかった思い出はより凄惨になります。人がそう思いたがる方へ、思い出も変化していくのかもしれません。 しかし、現実は違います。現実は現実だけです。過去や、物語ではなく、現実に目を向けた曲作りにここまで徹底したことはおそらく私の音楽作家人生の中で初めてのことでした。 そしてこのアルバムの中で、私はまだ未来について描くことはできませんでした。どうかこのアルバムを聴いたあなたには、あらためて未来に思いを馳せてほしいのです。 アルバムタイトル『HAND DOWN』には「伝承する」という意味があります。未来の果ての子どもたちに私たちは、何を伝え、何を残さないのか。過去から何を学び、現在をどう生き、未来に何を託すのか。問いかけのような、課せられた責任のような、そんなアルバムになりました。
Produced by 三田村 潤 Vocals, Guitars and Computer Programmings 三田村 潤 Recorded and Mixed by 三田村 潤 at Room JM Mastered by 三田村 潤 at Room JM Art Direction and Design 三田村 潤 Sales Promotion 三田村 潤 (JOY MUSIC RECORDS) Thanks to My Friends, Families and All the People Who Love My Music!
joy-music-records.com