4 ある兵士の死
母さん 英雄にあこがれて 汽車に乗る私を
たくさんの人に隠れるように 見送ってくれましたね
悲しげな表情(かお)で 小さな旗を振って
Woh , Oh , Oh, Woh , Oh, Oh
つらい船酔いに苦んで たどり着いた見知らぬ国
作戦の地へ向かうため 三十㌔の背嚢を背負って
一日二十㌔の 行軍が続きます
それより 本当につらいのは 昼ではなく夜の方でした
上官や古参の兵士に 「精神注入だ」と殴られて
顔はひどく腫れて ズキズキ痛みます
Woh , Oh , Oh, Woh , Oh, Oh
母さん 初めての戦闘は 引き金を引く指が震えました
敵軍の補給路を断つために 行軍は続きます
ずっと歯を磨いていないので 虫歯が痛みます
水の浸みた軍靴(くつ)が 凍るようです
Woh , Oh , Oh, Woh , Oh, Oh
いつからか銃弾も食料も 補給が来なくなりました
現地自活の名のもとに 民衆からわずかな食料を
奪うことで今日も なんとか生きてます
あばらの浮き出た兵隊たちの 行軍は続きます
マラリアや赤痢でどれだけの 戦友を看取ったことでしょう
ウジ虫が私の 腕を撫でます
戦って戦って生き延びて
帰ればなお
「貴様!何故に生きているのか」
とののしられ
「生きて虜囚の辱めを受けず」
退かぬ ならば散るだけ
ある日 撤退の命令が とうとう下されました
されども 私には来た道を 引き返す力がありません
マラリアが身体を 蝕んでいたのです
上官はもう歩けない者達に 昇汞錠を2錠配りました
多くの動けない戦友が その毒で自ら命絶ちました
遠い異国の地で 私も死にます
戦って戦えなくなったものは
仲間に看取られることこそが栄誉
「生きて虜囚の辱めを受けず」
退かぬ ならば散るだけ
戦って戦ったその先に
この戦争はいつか終わるでしょうか
祖国の平和は守られたでしょうか
十年後の人は皆平和ですか
戦って戦ったその先に
この戦争はいつか終わるでしょうか
祖国の平和は守られたでしょうか
百年後の人は皆笑顔ですか
Woh , Oh , Oh, Woh , Oh, Oh
Woh , Oh , Oh, Woh , Oh, Oh
Woh , Oh , Oh, Woh , Oh, Oh